コラム

【戦略思考を鍛える②:左脳編】ペットが増えてもペットフードが売れないワケとは?

戦略思考

広告・インターネット業界で活躍するためには欠かせない、発想力。それは、企業の課題を解決するための戦略的な思考につながります。そこで今回は、『戦略思考トレーニングシリーズ』の著書、経営コンサルタントの鈴木貴博氏に戦略思考の鍛え方についてうかがいました。第1回目の右脳編に引き続き、第2回目は“論理的志向”を司る左脳を鍛えます。さあ、クイズに答えながら、一緒にトレーニングしましょう!

ーまずクイズの前にー

「右脳編でもお伝えしたとおり、左脳を鍛えるうえでもやはり、たくさんの情報に触れることが大事です。さらに、その情報の中から使えるものに気づく力を身につけることも重要でしょう。『左脳は論理的思考の脳』といいますが、左脳を鍛えるために必要なのは、直感でものを考えないことです。一歩引いて、情報を分析してみることから始めてみてくださいね」(鈴木氏)

 

それではさっそくクイズを出題!

 

問題1 ペットが増えたのに、ペットフードの売上が下がったのはなぜ?

少子高齢化の日本では、いまや子育てをする世帯よりもペットを育てている世帯の方が増加しています。この世相を反映して、スーパーでもベビー用品の棚が縮小する一方で、ペット用品売り場の面積は年々広がっています。ところがペットフード会社の社長に聞くと、「ドッグフードはここ数年、売上が下がっていて困る」と言うのです。なぜ、そんなことが起きているのでしょうか?

 

ヒント

まずは、「売り上げ」というものがどのように構成されているのかを考えてみましょう。そうすると、ここで矛盾が生じていることが分かり、糸口が見つかるかもしれません。

 

◆答え

「この問題、右脳的な発想では答えには絶対にたどり着けません。ポイントは、ヒントにもあるようにペットフードの売り上げがどのように構成されているかに気付けるかどうかです。売上は『売上高=顧客数×単価×購入量×購入頻度』で計算できます。そしてもう一つのポイントは、そこから『単価か購入量が減っているのではないか』と解決の糸口が見つけられる力があるかどうかです。ここまできたら、あと少し。実はペットが食べる量が減っているのが理由でした。ではなぜ食べる量が減っているのでしょうか。ここまで来れば、お分かりになる方も多いと思います。そう、クイズの正解は『(食べる量が少ない)小型犬が増えたから』なんです」(鈴木氏)

つまり、売上がどのように構成されているのかが、パッと浮かぶかどうかが、明暗を分けます。また、「ペットが増えているのに、売上が増えないなんてあり得ない」という固定観念に縛られてしまう人も、答えには近づけないかもしれませんね。購入量が減っているという事実から、「その理由が小型犬ブーム」と発想を展開できる柔軟性も、この問題では大事なポイントです。

 

 

問題2 人気上昇のアメリカの小型歯ブラシ、日本で販売されなかったワケとは?

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昭和の時代の話です。アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンが歯医者さんが使う小型のミラーと同じ形をした『リーチ』という歯ブラシを日本で新発売したことがあります。歯を磨くヘッドの部分がこれまでの歯ブラシよりもずっとコンパクトで奥歯が磨きやすいので、日本市場で少しずつ売上を伸ばしました。けれども、当時の日本メーカーは『リーチ』に対して同じような対抗商品を敢えて出そうとしなかったと言われています。なぜでしょうか?

◆ヒント

これも、問題1と同様に左脳を働かせてみましょう。ポイントは、日本メーカーの売上が、どういう構成でできているのか考えてみることです。

◆答え

「問題1と同様に、売上の構成を思い浮かべてみましょう。最初のステップは、日本メーカーの売上が「歯ブラシ+歯磨き」で構成されている点。そして次のステップが、さらに歯ブラシと歯磨きでは、歯磨きの方が圧倒的に多いという点です。ここまで発想がおよべば、もう解けたも同然。つまり、磨く面積が小さくなるということは、そこに乗せられる歯磨きの量が減るということ。結果的に、歯磨きの減りが遅くなって売れなくなるから、というのが答えです」(鈴木氏)

同じ売上の問題でも、違う角度からの因数分解が必要です。この問題の面白いところは、結果的に対抗商品を出さなかった日本のメーカーの売り上げは、落ちることがなかったという点です。戦略志向的に言うと「対策を打たない方がいいこともある」という気付きにもなります。

 

問題3 ビッグサイズの歯磨きを早く消費させる戦略とは?

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アメリカに行くと、何でもビッグサイズのものが売っているのをご存じだと思います。食品の場合、サイズがビッグなことが、アメリカ人の肥満が増える社会問題の一因とも言われています。これは食品だけでなく、日用品でも同じ。たとえば歯磨きの場合も日本よりもずっと大きなサイズの商品が売られています。つまり減りが遅いはずです。では歯磨きのメーカーは、どうやって使う量を増やしているのでしょうか?

 

◆ヒント

同じ歯磨きの問題ですが、こちらは「売上高=単価×販売数量」という式のうちの販売数量をさらに細かく見てみてみましょう。

◆答え

「これは、どう工夫すればたくさん使ってくれるのかを考える問題でもあります。たくさん使うようになるということは、どういうことか。ここで左脳的な因数分解が必要になります。先に答えをお伝えすると、『チューブの口が太くなっている』です。歯磨きの使用量は、チューブの口の表面積に比例します。日本で一般的なチューブの口の大きさは6ミリですが、アメリカでは7ミリ強と直径が1ミリ大きいため、使用料はチューブの口の表面積と比例するので『約1.4倍多く使う』という計算になります。ちなみにこうした考え方は、デジタルマーケティングの世界でよく使われるタイプのものですね」(鈴木氏)

一見すると、右脳的な発想力で答えに近づけそうな問題ですが、どこに工夫をすれば計算式の答えが増えるのかという発想で考えることが大事です。

 

さて、いかがでしたか? 大事なのは、状況を論理的に分析しようとすることです。3つのクイズからもわかるように、売上高を因数分解するということは、戦略を考えるうえでとても基本的な手法。『売上高を上げる』といったようなうまくいくための方法はもちろん、『なぜ売上が増えないのか』についても論理的に把握することができるのです。

右脳だけでなく左脳もしっかり鍛えて、両方をうまく使い分けられる柔軟な発想力を身につけてくださいね!

今回お話をうかがったのは

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鈴木貴博氏

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年に亘り活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、2003年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。

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CATEGORY:コラム

DATE:2015-11-25

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