イベントレポート

最新事例で見るソーシャルグッドなビジネス イベントレポート

ソーシャルグッド去る1月19日、新たな年の幕開けにふさわしいセミナーが開催されました。スピーカーは広告業界の第一線でご活躍中のクリエイティブディレクター、木村健太郎氏(博報堂ケトル 代表取締共CEO)と、田中淳一氏(クリエイティブブティックPOPS )。従来の広告の枠を超え、ソーシャルを巧みに使いこなす彼らが見据えるソーシャルグッドなビジネス、その核心へと踏み込みました。

 

第一部
博報堂ケトル 木村健太郎氏の手掛けたビジネス

木村健太郎

ソーシャルグッドというのは社会にとって良いものだったらなんでもよくて、ボランティアでもNGOでも国がやっても良いのですが、それがビジネスとなると「ソーシャルグッド且つビジネス」ということになります。クライアントワークという中でのソーシャルグッドがどのようにビジネス化していくかということについて、今日は3つの視点でお話したいなと思います。

 

ソーシャルグッドなビジネスの構造は?

まずは、ソーシャルグッドがどのような仕組みになっているかということについて。例えば歌が好きな人が歌を歌って楽しんでいるとします。その人が今度は、お客さんに向けて歌ったり、お客さんの要望を聞いたり、コンサートをやったりする。するとそれは『顧客視点』になります。さらにそこから、社会のためになにかできないか?と考えて、「We Are The World」というチャリティをする。つまり歌で社会貢献するということですね。それが、『ソーシャルグッド』の基本的構造です。

これを難しくいうとCSVといいます。「クリエイトシェアドヴァリュー」といって、企業もお客さんも社会もみんながハッピーだよね、というwin-winの価値をつくり出すこと、そしてお客さんも社会に還元できて、参加できるようにすること、それがCSVです。

たとえば、博報堂ケトルの畑中君が手掛けたビジネスに「スーモ」のキャンペーンがあります。「いい住まいさがしをしてベストな家を紹介する」という本業の延長線上にある、自然保護活動です。
環境破壊にさらされているヤドカリの住環境に着目し、東京海洋大学とのチームを作って、科学的、環境的に優れたヤドカリの住まいを開発しました。
ここでのCSVはというと、クライアントにとっては“ナンバー1の住宅情報サービスを訴求できる”こと、お客さんにとっては、“信頼できる家探しができる”こと、社会にとっては、“環境保護に役立つ活動である”ことです。

もうひとつ、僕が手がけたもので、トヨタの衝突安全機能をテーマにし、父の日に向けて父親への感謝を訴える“Loving Eyes”というオンラインフィルムのCSVをご紹介します。トヨタにとっては“衝突安全機能の認知が広がる”、お客さんにとっては“大切な人の命を守れる”、社会にとっては“父の日に父に感謝するきっかけができる”という価値が生まれています。

 

ソーシャルグッドなビジネスは、なんのため?

ブランドを社会的役割にまで引き上げて、もう一歩高次元の目的をつくっていこうというのがソーシャルグッドキャンペーンの考え方です。最近はブランドパーパスという言い方もしていて、ブランドの存在価値やミッションを世の中に指し示すために行っています。
企業ミッションについてですが、実は企業それぞれが社会の幸せを目指しているという部分は同じです。ただその登る道が違うだけなんです。ただし、本業とは全く関係のない分不相応なこと(プロモーションやキャンペーン)をやると悪目立ちになってしまうで、ブランドに与えられたミッションをきちんとクリアするために行うことが大切です。

 

ソーシャルグッドなビジネスは、どのように行うの?

ポイントは新しいカルチャーにしてしまうということだと思っています。みんなが参加できるようにカルチャープラットフォーム化すること。それがビジネスが社会に役立つCSVの形であると考えています。

 

第二部 
POPS田中氏が実践してきたビジネス

田中淳一

ADKから独立した大きな理由のひとつが「クリエイティブで地方をもっと人気者にしたい」というものでした。国内で地方を人気にものにしていくのはもちろん、日本ではまだ、ローカルからグローバルに出ていけないものがたくさんあります。でもソーシャルをうまく使うことでチャンスがあるんじゃないか? 地方のいろんなものをPOPにして行きたい! と思ったんです。だからPOPSという会社をつくりました。今日は僕がこの一年で手掛けたいくつかのケースをご紹介させていただきます。

 

沖縄の小さな村をPOPに!

沖縄の小さな村のブランディング動画制作の依頼がきました。今帰仁村(なきじんそん)という村で、全国で一番所得の低いとされる沖縄のなかでも、最も所得が低い村と言われている村です。村をもっと知らせたいという思いがあるものの、取材をすると誰彼構わず来て欲しいわけではない、今帰仁の良さをわかる人に訪れて欲しいというリクエストもありました。だから実際に僕も現地に足を運び、現地の人に話を聞き、村の空気を感じて。その中でどういう人ならこの村の良さを理解して、またお互いの出会いが幸せに感じられるかを考えて”今帰仁ベンチ”というドラマ※を作りました。

※東京で仕事も恋もうまく行かず疲れ果てたOLが今帰仁村に一人旅に行くショートストーリー。最初は現地の人とのコミュニケーションに戸惑いながらも、次第に心を開いていく様子が描かています。

 

自虐に満ちた鳥取市をPOPに!

鳥取市の仕事もしました。鳥取では近年、米子や境港が多く注目を浴びてしまってる状況もあり。鳥取市に住んでいる人たちも、「砂しかないし」って自分のことを自虐ネタにするぐらい。まず、自分たちの街にもっと自信を持ってもらうことがミッションだなと思いました。そこでワークショップを開催して、鳥取市のすごい!ところを市民自らが見つけ出し、その中から100個ピックアップして、”すごい!鳥取市”という鳥取市ネタサイトをつくりました。たとえば、海がキレイというのを「海中に落ちた差し歯を見つけられるほど、透明な海がすごい」とかにして。これもワークショップで出てきた実話をそのままコピーにしたんです。そうしたら、けっこういろんなマスコミで取り上げられて。そこで翌年は、その100個のネタを浅田政志さんという人気の写真家に撮り直してもらって写真集にして全国発売しました。鳥取市のみなさんに自分たちで見つけたネタが立派な写真集になるという体験をしてもらったんです。

スゴイ鳥取市
ソーシャルグッドの可能性とは

ソーシャルグッドなビジネスのなかで、衝撃を受けたのがガムをPOPにするという外国のキャンペーン映像です。恋人同士の出会いから結婚までが描かれた映像作品ですが、特別なものを分け与える力みたいな、まさしくブランドに対する力を再発見して、コミュニケーションでそれを見つけ出して、その物自体に特別な価値があることをうまく表している事例だなぁと思いました。

ソーシャルグッドなビジネスとはなんだろう?と考えていると、僕らの役目のひとつにブランドパーパスを見つけることが求められる時代になったなぁと感じます。どのような商品でもサービスでも、おそらく誰かの何かの役に立つために生まれた商品のはずです。でもそれが見えなくなって、競合との差別化ばかりに方向性が向いてしまいがちになる。それよりも、商品をつくった時のピュアな気持ちを見出して伝わるようにする。それが、結果的にソーシャルグッドなビジネスとなっていくと思います。今は、自分たちだけが勝ち抜ければいい、という考えが受け入れられなくなってきているからなんじゃないかなと。いろんな意味で、日本も世界も成熟してきているのだろうなと思います。ソーシャルグッドを包含していないと商品やサービスが受け入れられない時代が来るかもしれませんね。僕らつくり手も、ソーシャルグッドをたしなみとして持って表現していかないといけないんじゃないかなと個人的に感じています。

 

この後は、お二人のトークセッションに。企業ミッションのお話、そしてお互いの仕事に対する思いやソーシャルグッドなビジネスに対する熱意を思いっきり語っていただきました。質疑応答では、さまざまな職種の方からの質問が。みなさん最後まで真剣にお二人のお話に聞き入っていたようです。さらには、イベント終了後も「質問したい!」という方々が長蛇の列に! 2016年最初のbuddyzイベントは、大盛況のうちに幕を閉じました。

 

 

CATEGORY:イベントレポート

DATE:2016-03-07

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