イベントレポート

デザイナーの実力を最大限に発揮させるマネジメントとは?~デザイナーファーストな組織デザイン方法 イベントレポート~


写真は左から、株式会社グッドパッチ 長岡氏、株式会社FOLIO 橋本氏、株式会社DONGURI 熊本氏。

ビジネスの現場におけるデザイナーの役割が日々大きくなっています。事業開発のためのファシリテーターとして、または組織における先導役として、事業の成長にコミットしていく機会が急激に増えているのです。

言い換えれば、組織におけるデザイナーのプレゼンスを上げることは、事業を成長させる活力になるということでもあります。そこで必要なのが、デザイン組織がバリューを最大限発揮するためのマネジメントです。

今回のイベントでは、デザイナーが活躍しやすい風土文化、構造形成を進めてきたお三方にご登壇いただきました。その様子をレポートします。


株式会社DONGURI 組織デザインコンサルタント
熊本ひとみ(くまもと・ひとみ)氏【ファシリテーター】
中央大学卒業後、レイス株式会社に入社し、スカウト事業の立ち上げからバックオフィス部門マネージャーを務める。その後、Webマーケティングを手掛けるヴァンテージマネジメント株式会社にジョインし、組織風土文化形成を行うチームメイキング部門のマネージャーに。在籍時代、GPTW「働きがいのある会社」4年連続ランクイン。2017年よりデザインコンサルティングファーム・株式会社DONGURIにてクライアント・自社の組織デザインを行う。
HP https://www.don-guri.com/
株式会社FOLIO デザイン戦略室長
橋本淳史(はしもと・あつし)氏
多摩美術大学 情報デザイン学科卒。卒業後、株式会社カヤックに入社し、webデザイナーとして自社サービス、クライアントワーク案件に従事。ラボ事業で年間99個のサービスリリースに挑戦や、現代アーティストとコラボしたプロダクトデザインを行う。ソーシャルゲーム黎明期からアプリデザインを開始する。その後、ヤフー株式会社へ。IoT事業部門に所属し、UXデザイン部長兼デザイナーとしてアプリを中心としたデザイン業務に組織横断的に従事。クリエイティブディレクターとして全社のクリエイティブ方針策定やブランディングなどにも関わる。2018年より株式会社FOLIOにてデザイン戦略室長。
HP https://folio-sec.com/株式会社グッドパッチ マネージャー
長岡宏(ながおか・ひろし)氏
Webデザイナー及び、事業部マネージャーとして複数のITベンチャーに従事し、大規模サイトからコーポレートサイト迄、多様なWebデザイン業務・アートディレクション・プロジェクトマネジメントを経験。人事やクリエイターの育成・教育も行なう。2018年1月に株式会社LIGを退社後、2月より株式会社グッドパッチにジョイン。
HP https://goodpatch.com/jp

 

イベントは2部構成。前半は注目のプレゼンター3人による「デザイナーファーストな組織デザイン方法」についてのスピーチ。そして後半は、3人が来場者から寄せられた質問に答えるかたちでのトークセッションとなりました。

この日の来場者は約100名で、会場のホールハートラウンジは超満員。それではさっそく、1部の様子からお伝えします。

チームビルディングは、
多角的な視点でトライアンドエラーを繰り返すべし


最初に登壇したのは、本日のファシリテーターを務める株式会社DONGURI・組織デザインコンサルタントの熊本ひとみ氏。

株式会社DONGURIは、デザイン思考を武器に、企業における調査分析、商品開発、ブランド開発、理念開発、プロモーションまでを幅広く手掛ける、今注目の「組織変革型デザインファーム」です。

これまでに、一心堂本舗の人気商品「キャラクターフェイスパック」や、佐賀県の地方創成プロジェクトの1つである「ストリートファイター佐賀」キャンペーンをはじめ、各界有名企業の経営コンサルやマーケティングなどを数多く手掛けてきました。

熊本氏のトークテーマは、「ビジネスフロント組織とクリエイター組織でチームビルディングをやってみた」。

最初に、熊本氏が考えるチームビルディングの5つの基本が挙げられ、その内容が具体事例などを交えながら噛み砕いて説明されました。

来場者の反応が大きかったのが、熊本氏が考案した20項目からなる「チームビルディングの成果を図る指標」について。組織作りのための考え方、そしてその評価方法が詰まった内容は、多くの来場者が「さっそく自社で取り入れてみたい」と思ったに違いありません。

クリエイターが経営の基礎を身に付けられる場所をつくり、クライアントの社長と対等に話し、コンサルできる能力を身に付けるための「経営キャンプ」の実施など、自社の具体的な取り組みについてもいくつか紹介。

最後には、「これさえやればチームがまとまるというウルトラCはない。組織のフェーズや特性は様々だからこそ、状況に応じて何が足りないのか、今何をやってみたらいいのかを、いろんな角度から考え、トライアンドエラーを繰り返すことが大事です」と結びました。

『やってほしいこと』『やりたいこと』『できること』
3つが交わる領域を最大にする


続いての登壇は、株式会社FOLIOでデザイン戦略室長を務める橋本淳史氏。

株式会社FOLIOは、約10年ぶりに誕生したオンライン証券会社で、今年創業2年目を迎えました。株式がテーマで、買えるという新しさに注目が集まる、今まさに成長中の証券会社です。

橋本氏は、独自のマネージャー論を展開。マネージャーがすべき仕事や、求められる力について、自身の経験・キャリアを元に話しました。

冒頭いきなり、「プレーヤー(デザイナー)とマネージャーは違うものではない!」と断言。「私は、マネージャーとは、人と組織をデザインする人だと考えています。デザインの対象が、単にサービスや商品のデザインというところから、人や組織に変わっただけ。根本的にはマネージャーであってもデザイナー。だからこそ、デザインシンキングが必要です」と橋本氏。

そして、メンバーに対して「『やってほしいこと』『やりたいこと』『できること』の3つが交わる領域を最大にすることが、マネージャーがやらなくてはいけないこと」だと語ります。

「そのためには、メンバーに何を言うかを考えるよりも、信頼関係を築くことに力を注ぐべき。関係性が深まることと、言葉が相手に響く深さは比例する。となると、相手を観察し、相手の価値観を知ろうとする努力が必要です」と話しました。

これからのデザイナーに必要なのはバランス感覚。
ひとり一人の得意不得意領域を知るべき


最後に登場したのが、株式会社グッドパッチでマネージャーを務める長岡 宏氏。

株式会社グッドパッチは「Designing the Wow!」をキャッチフレーズに、ハートに響くUIを追求し続けるグローバルなUIカンパニーとして急成長中。UI/UXデザインを軸にしながら、事業やプロダクトの戦略立案や企画設計から開発・実装までをワンストップで提供しています。ベルリンと台北にも拠点を持つ、まさにグローバル企業で、2011年9月に設立されています。

長岡氏は、自身の体験をもとにした「デザイナーをマネジメントするために心がけていること」「スキルアップやモチベーションアップに心がけていること」「マネジメント失敗談」といったテーマについてスピーチ。

「大事なのは、デザイナーの得意・不得意領域を知っておくこと。そのための有効な方法として、クリエイティブとオペレーティブ、ロジカルとエモーショナルという縦横軸の4つの図表で整理するのがオススメ。たとえば採用の際も、どの領域の人材が必要なのかを判断しやすくなります」と長岡氏。

さらに、こうした分析をもとにデザイナー個人が目指したい方向性を理解し、その実現のために何にチャレンジさせたらいいのかを考えてマネジメントすることの重要性について話します。結果としてモチベーションが上がり、成長にもつながるというわけです。

「今、いろいろなところでデザインシンキングといった言葉が飛び交っています。デザイナーは注目されていて、デザイナーのビジネスへのコミットメントが求められているのです。これからのデザイナーに必要なのは、バランス感覚です」と語り、「具体と抽象のバランス」「定量と定性のバランス」「ロジカルとエモーショナルのバランス」「経営視点とユーザー視点のバランス」の4つを挙げました。

3人が語るデザイナーの評価、スキルアップ、そして採用


休憩をはさみ、第2部へ突入。ここからは3人によるトークセッションが行われました。
以下、その様子をダイジェストで紹介します。

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(熊本氏)
ここからは、寄せられた質問に答えるかたちで、それぞれが考えていることや、皆さんがチームマネジメントをするためのヒントになるようなことをお話していければと思っています。

<質問1>
デザイナーの評価はどうやって行っていますか?

(長岡氏)
評価には決まった答えがあるわけではなく、100人が100人納得することはあり得ません。その中で、人に教えられる、ナレッジを共有できる、外部に発信できる、外部のブランディングにつながる、といったところが最終的に必要だと思っています。

グッドパッチの場合、たとえば2年先みたいなところに明確な目標を置いたりするため、OKRなどを用いて、会社が立てた目標に対して各個人に一つずつ落としていき、達成の度合いを見たりすることはしていますね。その前提として、面談を通じてどのオブジェクトを選ぶかという話はしっかりして、「結果としてこういう状態になっていれば、それは達成していることになりますよね」という話をしたうえで、営業数値を入れこんだりしています。
※「Objective and Key Result」の略。チームや個人の目標を明確化する仕組みのこと。

(橋本氏)
最初にお伝えしたいのは、短期的に成果につながらないようなこと、たとえば「魅力アップ」みたいなことについても、しっかり評価するということが大事だということです。FOLIOでは、日報ならぬ「分報」という取り組みを行っています。チャットツールを使って、Twitterでつぶやくように自分のチャンネル内に気軽に情報を発信していく仕組みを作っているんです。そこに自分が今やっている仕事なんかをどんどん「つぶやく」わけですが、誰が何をやっているのかが見えますし、もし困っていたら誰かが対応したりなど、お互いの仕事を共有しています。

(熊本氏)
どちらも、こまめにコミュニケーションを取って進捗を共有されているんですね、ということは、査定もフィードバックもあまりギャップはない感じですか?

(長岡氏)
そうですね。当社では「スキル」「売上目標」「(個人のスキルを)どう上げるか」「バリュー」という4つの軸をトータルに見て評価しています。

<質問2>
デザインのレビューのタイミングや適切な方法はありますか?

(長岡氏)
これは、そのデザイナーのスキルやレベルによりますね。一人前ではない場合は、できるだけ早い方がいいと思うので、最初から入って一緒に考えるところからやります。逆にシニアクラスの場合は任せた方が成長につながるので、最後の最後で品質を見てあげればいいのかなと。だから、まずは個人のスキルをちゃんと見極めて、適切なタイミングを選ぶことではないでしょうか。

(橋本氏)
先ほどお話しした「分報」がここでも役に立っています。常に個人のつぶやきとして上がってくるので、そこでチェックが可能ですよね。

あとは、一応のルールを皆で作っておくことではないでしょうか。当社の場合は、デザイナー全員が作ったものに対してNOがなければOK、みたいな感じです。ただ、これはまだ人数が少ないからできることであって、今後社員数が増えていった時にはどうすべきか、考えておかなくてはいけないなと思っています。

ただ、デザイナーによってはフィードバックを嫌う人もいるじゃないですか。自分の作った物を通じて自分が批判されているように受け取るデザイナーもいるので、フィードバックの仕方、特にどう伝えるのかは重要です。私の場合は、できるだけ「こうしたらいいんじゃないか」みたいな軸で話をするようにしています。

(長岡氏)
要は、フィードバックに際しても「うちはこういう文化でやっているよ」という共通認識が大事だと思うんです。そことセットになって初めて、成立するのかなと。いきなりルールだけ作るのは良くないと思いますね。

<質問3>
これからのデザイナーのあるべき姿はどのようなものですか?

(長岡氏)
クライアントの課題が複雑になってきているからこそ、そこをデザイナーが一緒に考えて、課題解決のためのアウトプットができないとダメなのかなと感じています。現場にデザイナーもきちんとアサインした方がいいですし、となると、そのためにはデザイナーもビジネスへの理解をちゃんと着けておかなくてはいけませんよね。

(熊本氏)
課題解決のためのアウトプットに取り組むためのスキルセットが必要、ということですね。

(橋本氏)
プロフェッショナルとしてある特定の領域を深めるというのは一つのあり方ですが、まずは最初の全体の設計図が分かっていることも大事なので、いろんなところにアンテナを張れるかは重要なことだと思いますね。これはFOLIOに限らずですが、領域を狭めない方がいいのかなと思ったりしています。つぶしがきくというとちょっと語弊があるかもしれませんが、例えば「今は○○が来ている」という場合に、そこだけに特化してしまうと5年後には通用しなくなっているわけですよね。ですから、情報設計というか、技術を持っておいてデザインできることが重要なのかなと考えています。

(熊本氏)
いわゆる「レア人材」になるということでしょうか?

(橋本氏)
個人でスキルを伸ばすことのメリットは当然あります。ただ、自分だけでいいものを作ろうというよりは、チームや組織でものを作っていく方がずっといいものが出来ると思っているんです。だから、みんなで協力して作っていくんだというマインドは必要だと思いますね。

(長岡氏)
グッドパッチでは、プロジェクトの評価を行う場がちゃんとあるんです。発表会ではないですが、このプロジェクトにはどんな課題があって、課題解決のために何をやって、その結果どういうビジネスモデルでこのようなプロダクトになったのか、それをきちんと発表して、同時にマーケットフィットについても考えるんです。いくらいいものを作っても、マーケットに合わなければ意味がないわけで、そこは重きを置いていますね。根本にあるのは、デザイナーの成果についてきちんと定量でもはかれるようにしていこうという考え方だと思います。

<質問4>
デザインのスキルアップのために有効な方法について教えてください。たとえば、普段からどのようなものを見たりしているのでしょうか?

(橋本氏)
僕は本や雑誌をすごく読みますね。あとは、前職の時にアプリのデザイナー向け研修などでよくやっていたのは、デザインのデッサンというか、トレースですね。これはすごく効果がありました。

(長岡氏)
トレースは私もやっていました。そこから、なぜこのフォント、なぜこのレイアウトなのかを思考していくんです。

(熊本氏)
普段注目しているツールなどはありますか?

(長岡氏)
最近はプロトタイプ系のツールが増えていて、例えば「Adobe XD」とか、「InVison」あたりは注目して見ていますね。最近だとSketchがPrototypeに対応したので、そのあたりも使ってみようかなと思ったりしています。

(橋本氏)
実はあんまりネットとかを見ないので、よくわからないんですよね(笑)。本は読みますよ。そんなに特別なものはないんじゃないですかね。

<質問5>
最後の質問です。デザイナーの採用にあたっての有効なチャネルや採用方法はありますか?

(橋本氏)
今入社してもらっている中途の方は、ほとんどがリファラルです。外部のサービスを使っても募集は行っていますが、リファラルの方が効率的だと思っています。その人がどういう人かわかっているわけですし、入社後に知り合いがいるので入る人もなじみやすいはずですから。

(長岡氏)
リファラルは僕たちも評価していて、橋本さんの話に付け加えるならば、カルチャーにフィットしやすい気がするんです。そういう意味で採用の効率はすごく高いと思います。あとは、スカウトする場合もあるのですが、その際に気をつけているのは、自分たちの言葉でスカウトメッセージを送ること。そこは今の世の中で特に重要視されている部分かなと思っています。借りてきたような言葉ではなく、という意味です。

(熊本氏)
いずれにしても、待つというよりは、能動的にアクションしていく感じなのですね。

(橋本氏)
そうですね。Twitterを使って直接連絡したりもします。いい人がいたらどんどん声をかけますし、それが可能になっているわけですから、採用される側としたら今はいい環境だと思います。それは同時に、いろいろな企業の話を聞けるということでもあるという意味で、他がやっているなら自分たちもやっていかなくては負けてしまう、みたいな気持ちもあるんです。

(長岡氏)
採用の軸としてぶらさないように気をつけているのは、カルチャーマッチングですね。スキルは伸ばせますが、合う人合わない人というのはどうしようもできません。

(橋本氏)
うちは基本的に即戦力採用です。かつ、自分たちが尊敬できる人で、スキル的にも優れている人。だから伸びしろとかは正直、あまり見ていないんです。

1部、2部を合わせて2時間を超える長いイベントとなりましたが、時間を感じさせない盛りだくさんの内容となりました。来場者の皆さんも多くの気づきや、明日にも実践できるような話が聞けたようで、イベント後も残って登壇者の方と名刺交換をしたり、直接質問をされる方がたくさんいらっしゃいました。

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CATEGORY:イベントレポート

DATE:2018-03-27

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