イベントレポート

カンヌ2015で話題! 本田哲也氏講演「なぜ日本人は世界一クリエイティブなのか」トークショーレポート

本田哲也
buddyzでは、2015年8月25日(火)に6月開催の「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」(以下、カンヌ)に公式スピーカーとして登壇したブルーカレント・ジャパン代表取締役の本田哲也氏、そしてゲストスピーカーにクリエイティブディレクターの佐藤達郎氏を迎えて、トークセッションを開催しました。今回は、そのダイジェストをお届けします!


世界が注目した「日本のクリエイティブ」の3つの本質──本田哲也氏

本田哲也

カンヌでは日本のクリエイティブが非常に注目されています。その本質とは何か。僕は3つのキーワードがあると考えています。

1つはPerfectly Rejecting Perfection(完璧を完璧に否定する)」。略してPRPです。日本は世界から「完璧主義」と見られがちですが、古くは千利休の「侘び寂び」の世界観から最近では「ゆるキャラ」など、「ゆるさの美学」が伝統的に息づいています。ポイントは、「意図的に計算されたゆるさ」であること。「Loose」ではなく、「Perfection」を「Perfectly Reject」することが日本のクリエイティブの特質なのです。

2つ目はInner Child(秘めた幼児性)」。世界での日本の印象は「真面目で礼儀正しい」というもの。でも実は、内に幼児性を抱えていて、カラオケや宴会でその資質が顔を出します。これも「今日は無礼講」というときに発揮される、ある種のシステマティックさがあるのが日本的なところ。今年のカンヌで受賞したカゴメの「ウェアラブルトマト」などは、Inner Child的な遊び心をシステマティックに具現化した代表例といえます。

最後のキーワードは、Next Stage Creative(次世代クリエイティブ)」。何が「次世代」かというと「増幅するクリエイティブ」、「リビルディング」と言い替えてもいいのですが、オリジナルに何かを加えて違うものを生み出すことが日本人は得意ですよね。大事なのは単なるコピーではなく、オリジナルの本質を理解したうえで、新しいオリジナルを再構築することです。

 

カンヌの変化から広告界の“今”が見える──佐藤達郎氏

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世界に広告賞は数多くありますが、現地参加型で1万3000人が集まるイベントはほかになく、カンヌは新しいものに賞を与える傾向がある。飛び抜けて影響力を持つ国際広告祭だといえます。

アワードのあり方が変化し続けていることも特徴の一つで、僕が2004年に審査員を務めたときには7つだった部門が、今は17部門にまで増えました。2011年にはフェスティバルの名称から「Advertising」が消え、「Creativity」が使われるようになった。なぜか。現実のマーケティング界が、そう変化しているからです。つまりCM1本、ポスター1枚では、人は動かなくなったということ。本田さんが手掛ける戦略PRもそうですが、人を動かす“仕掛け”が問われる時代になっているのです。

僕は14年間カンヌを見続けてきて、こうした変化を日本の広告にも使えるヒント集にした『「これからの広告」の教科書』を先ごろ出版しました。その冒頭にも書きましたが、『変化は広告の「宿命」』。その変化対応のヒントを得られるのが、カンヌなのです。

 

対談:もっと海外に発信を──本田哲也氏×佐藤達郎氏

本田哲也

佐藤氏:本田さんのカンヌでの英語のスピーチは素晴らしいものでした。どんなことに気をつけてまとめられたのですか。

本田氏:私は外資系企業にいることもあり、日本人と外国人では腹落ちの仕方が違うことを日ごろから実感しています。広告やPRも同じですが、オーディエンスのコンテクストに合わせていかないと、伝わるものも伝わらない。ですから、言いたいことありきではなく、“聴衆は誰か”から発想して構成しました。

佐藤氏:スピーチへの反応はどうでしたか。

本田氏:今回は、普段何となく感じていることを言語化することが狙いの一つでした。PRもそうですが、言われて「ああそうか」と頭の中で何かがバーッとつながる感覚が大事。その役割を持つ言葉として「PRP」や「Inner Child」などのキーワードを使いました。実際スピーチの翌日以降も、皆さんその言葉を覚えてくれていましたね。

佐藤氏:僕も論文の中で、ある傾向に名前をつけるというのはよくやります。大事なことですね。

本田氏:そう思います。言語やカルチャーを超えたコラボレーションやコ・クリエーションの壁になるのが、微妙なニュアンスの伝え方。ゆるキャラを説明するのに「PRP」といえばスパンとわかるという、そうした言葉は必要ですね。

佐藤氏:コミュニケーションの工夫とともに、日本人が英語で海外に発信していくことが大切ですね。

本田氏:僕たちには伝えるべきものがあるというプライドを持つことが、まず大事。ただそれも、発信しなければ永遠に伝わらないわけで、彼らと同じ土俵に乗るためには、英語力も含めて発信力を上げていかなくちゃいけないと思いますね。

 

<登壇者プロフィール>
本田哲也(ほんだ・てつや)
ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長/CEO

1970年生まれ。戦略PRプランナー。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。セガの海外事業部を経て1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に「戦略PR」(アスキー新書)を上梓し、広告業界にPRブームを巻き起こす。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の大手顧客に、戦略PRの実績多数。戦略PR/マーケティング関連の著作、講演実績多数。

著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「ソーシャルインフルエンス」(アスキーメディアワークス)、「最新 戦略PR 入門編、実践編」(KADOKAWA)を2014年10月に上梓。2014年7月に刊行した「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。」(LINE株式会社 上級執行役員 田端信太郎氏との共著)は発売2ヶ月で5万部を超えるベストセラーに2015年2月からは公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)マーケティング委員会の委員も務める。アドテックトーキョー、カンヌライオンズ2015公式スピーカー。スパイクスアジア2015 PR部門審査員。世界的なアワード『PRWeek Awards 2015』にて「PR Professional of the Year」を受賞。

佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)

2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、株式会社小田急エージェンシーの外部アドバイザーも務める。

著書に『教えて!カンヌ国際広告祭』(アスキー新書)、『自分を広告する技術』(講談社+α新書)、『アイデアの選び方』(阪急コミュニケーションズ)、『NOをYESにする力!』(実業之日本社)、『リーダーシップのなかった僕がチームで結果を出すためにした44のこと』(実務教育出版)、『社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方』(あさ出版)、『「これからの広告」の教科書』(かんき出版)等がある。

CATEGORY:イベントレポート

DATE:2015-09-15

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