コラム

広告業界にこそ必要な『デザイン・マネジメント』を探る。

これまで、広告業界が必要としてきた主な業務はマスメディア対応と広告クリエイティブがその主な物でした。

しかし、流動的で進歩の速度が著しく早まっている現代において、またITの発達が成熟期に達し始めた今、それだけをやっていたのでは市場規模は縮小していく一方です。そこで必要とされるのが『デザイン・マネジメント』という手法。それは言うなれば、顧客体験を重要視する、総合的に顧客動線の最終地点に至るまでの俯瞰から見た全体像の創出といっても過言ではありません。

●デザインとは包括的な顧客動線の構築。

デザイン・マネジメントという言葉通り、この本質はデザインになります。では、ここでいうデザインとはどういうものを指すのでしょう。一般にデザインというと、グラッフィクデザインやプロダクトデザインというように、クリエイティブな分野における造形や着色や編集などの作業のことをさします。しかしここでいうデザインとは、そうではありません。

デザイン・マネジメントの指すデザインとは、もっと幅の広い広義のデザインであり、それは業務やプロジェクト全体の設計や構成、もしくはプロセス全体を指す言葉なのです。つまりデザインとは、どこか一部分の工程ではなく、全体のプロセスを構築することによって得られる結果までを表現して提示するものなのです。

つまり、広告業界におけるデザイン・マネジメントとは優れた広告を作ることではなくビジネスのモデル作りから最終的な結果の部分までも構築しそのプロセスを提供するということになるのです。

●広告業の広告業界離れ

こういった視点が必要になった背景には、広告業の広告業界離れにその一因があります。これまでは、メーカーにしろその他企業にしろ、優れたサービスや優れた商品を生み出すことに全力を傾け、その他の部分は専門家に外注というケースが多くみられました。当然、広告業界もその外注の一端を担う業界です。しかし、高度情報化社会の発展により顧客のニーズは細分化、多様化の一途をたどります。

そうなると、画一的な価値観に裏付けられた製品やサービスの供給というのは難しくなり、いかに包括的な顧客体験を自社ブランドに抱え込むのかという考えが生まれてくるのです。そう、これもまさにデザイン・マネジメントですね。そうなると当然、製品やサービスを生み出す基点から顧客の手に渡る終点までをブランド内で構築し、そのプロセスそのものを商品価値とした経営がなされてきます。

そうなれば当然、広告そのものを制作する能力しかない広告代理店に用はありません。そこに必要になってくるのは、クライアント企業と共に広告業界ならではの「デザイン」を供給できる、専門職ならではの高度なデザイン・マネジメントに裏付けされた広告代理店の姿なのです。

●電通の人材育成に見るデザイン力の重要性

ある意味、日本の広告業界における最大の勝ち組である電通。そんな電通において2010年に設立された電通マネジメント・インスティテューションは、電通の幹部を育成する機関ですが、その教育内容は広告業とはかけ離れたものです。経営論、人材育成論、組織形成論は当然のことロジカルシンキングやアカウンティング、投資やファイナンスからM&Aに至るまで、かなり多岐にわたった人材の創出を目指しています。つまりこれこそが、今後の広告業界におけるデザイン力の重要性そのものです。

電通のこの取り組みは、従来のような広告業界内のスキルだけではなく、これまで広告業界が立ち入らなかった分野までもその掌中に収め包括的な顧客体験をその商材とし始めていることの何よりの証です。つまりそれはある意味コンサルティング業とでさえ競合する、プロセスの構築。売れる商品を売るための広告業ではなく、売れる商品を作り出しそれを顧客の手元に届けるまでのすべてをプロデュースしていくという、新しい「広告」の形なのです。

●デザイン・マネジメントに必要なもの、それは総合力。

では、そんなデザイン・マネジメントに必要なものは何か、それは言うまでもなく総合力です。広告業において重要であるクリエイティブなスキルや広告業のノウハウはもちろんのこと、経営戦略を立てることのできるストラテジスト、技術職であるエンジニア、データ分析のプロであるデータサイエンティストなど様々なスキルの総合体として存在していかなくてはいけないのです。

もしこれまで通り、よりクリエイティブであったり顧客訴求の強い広告を作れるということだけを強みにしている広告代理店があったとしても、もうそこにはかつての価値はないのです。少なくとも、自社内に総合力をつけるかもしくは提携をしていかない限り、そこにニーズはないのです。そして、提携にしろ自社内に総合力をつけるにしろ、その基点となるのがデザイン・マネジメントです。

広告業界において重要な地位を占め必要とされる企業であり続けるためには、究極的には、広告業界自体がこの社会で生き残っていくためには、デザイン・マネジメントを起点とした総合力はもはや不可欠になっているのです。

●広告業界がすべての業界と戦う時代に。

広告業界が総合力をつけないといけない、この事実はある事実の裏表です。それは、今後、広告業界の敵になるのは競合する同業他社ではなく、広告という手法をその経営のいずれかのステージで持ちうるすべての企業や業界が敵になるということです。

そして、特に、広告業自体が包括的なコンサルティングに類似してくるという事実からわかるように、コンサルティング業もまたその大きな競合先として存在してくるでしょう。そんな時、もしデザイン・マネジメントが不十分な広告代理店があったらどうなるのかは、言うまでもありません。

広告業界にとって、一番の強みは消費者動向や社会のトレンドに対する感覚とそのデータの蓄積、そして顧客体験の中核を担ってきたノウハウです。この強みは、コンサルティング業にも、またはほかの企業にも存在しない広告業界の大きな強みであり、メリットです。同じように包括的な戦略を立てたとしても、この強みのある広告業界には確実なニーズが存在します。

今後は、この強みをいかに生かした上でデザイン。マネジメントを実行できるのか、それが広告業界の大きな課題となっていくことは間違いありません。

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CATEGORY:コラム

DATE:2018-07-06

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