イベントレポート

博報堂ケトル出身のPRディレクターが教える「クリエイティブPR」とは何か?~イベントレポート

せっかくいい広告を作ったのに、まったく広まらなかった……”

”いざPRとなったら、PR会社が出てきてよく分からないままに終わってしまった……”

こうした悩みは「クリエイティブPR」で解決できます。

「クリエイティブPR」とは、広告にPR視点を取り入れたハイブリッドなPR手法のこと。企画の段階からメディアに取り上げられやすい文脈を意識することで、メディアや生活者の間での拡散速度が加速します。

でも「そもそもPRって何をするの?」といった基本的な疑問も多いはず。

そこで本セミナーでは、PRとは何か?広告とPRの違いとは?今の時代に求められるPRとは?など、PRと広告の基本的な構造理解を通して「クリエイティブPRとは何か?」を紐解きます。

3つの「セイ」

以前手掛けた仕事で、「ワークウェアスーツ(https://oasys-inc.jp/workwearsuit/)」というのがちょっと話題になりました。世界初スーツ型作業着ワークウェアスーツというもの自体が面白いっていうのもありますが、撥水性が強くて伸縮性に富んでいて、ジャージ型素材のちょっと高機能スーツみたいなんですが、あえて作業着だと言い切っています。BtoB向けのユニフォーム事業、清掃業、建設業の人達がユニフォームをこれに変えるとか、法人単位で購入することを狙った商品です。

これを業界の働き方改革で打ち出しました。何故スーツ型作業着にニーズがあるのかに確からしさを与えるために、建設業界や清掃業界の総務・人事の人達にアンケート調査を行なって「作業着のイメージが離職率を上げている」みたいなことを導き出して、それを元にワールドビジネスサテライトに応援してもらったりだとか、ねとらぼとかで小さい論争を巻き起こしたりだとかで、1日100件以上インバウンドの問い合わせを取ることに成功した事例です。三菱地所の高級マンションの管理人の方達が全てこの制服に変わることが決まったりしています。基本的にただ話題になるだけのキーワードを提案するのではなくて、売り上げや結果にコミットするような戦略をやっていくのが得意です。

つまりクリエイティブPRって何?というと、これは僕達が作った新しい概念です。この概念はいわゆる「広告クリエイティブ」と「広報」のスキルを合わせたものになっています。話題になる広告とか、モノが売れるPRとか、PRの概念を掛け合わせた広告というものを作っていくと、よりうまくいく確率が高いんじゃないかと思います。

そして、クリエイティブPRという考え方は3つの「セイ」を大事にしています。

  • What to Say              
  • How to Say               
  • ニュース性               

「What to Say」は、商品の何を言うか。例えばお茶の味を言うのか、パッケージデザインを言うのか、お茶が飲みたくなる瞬間を言うのか……一体何を言うのかが、まず最初に考える時に整理するポイントの一つです。

次に、このお茶の甘みをいうんだと。それが市場に一番活きるものだと決めたら、その甘みをどう言ったら世の中の人たちに一番通じるのかを考える。世界一おいしいお茶にとっての甘みだったり、最上級表現で表したり、色々な言い方、色々なデザインの仕方で甘みを伝えていく。基本的に広告クリエイティブを作ることは「What to Say」と「How to Say」をどう研ぎ澄ませるかが一番のキーポイントだというのは、コピーライターの方もデザイナーの方も納得する部分ではないかと思います。

この部分は10年くらいかけて1人前になっていくスキルだと思いますが、広告制作のクリエイター達に圧倒的に欠けているのが、最後のニュース性の部分です。基本的に言っていることは合っている、表現的にも面白い、だけれども全く話題にならない……みたいなことが、最後のニュース性が欠けると起こってしまう場合が多いのではないのかと思います。だから企画の最初の段階で「What to Say」は何か、「How to Say」は何か、そしてそこにTVやWebニュースで取り上げられるようなニュース性があるのかをチェックしていく事で、企画の精度は上がっていくのではないかと思っています。

丸亀製麺のハワイ入社式

2年くらい前の話ですが、丸亀製麺さんを運営するトリドールという会社は、実は丸亀製麺をはじめ、50以上のM&Aを繰り返してグローバルで外食を経営されていて、その時の採用の悩みは「知名度の高い同業他社に取られてしまい、英語が話せる幹部クラスの学生が集まりが悪い」ということでした。だから知名度の低さをなんとかしたいと。

いま丸亀製麺はハワイに最初の海外店舗ホノルル店を設けて連日大行列で、全丸亀製麺の中で一番売上が高い。そこで海外1号店の地で入社式をやろうとなりまして、「入社式はハワイでやります」と日経15段でどーんと出しました。新聞広告はゴディバの「義理チョコをやめよう」キャンペーンみたいにSNSとかの起点になることがすごく多いので、案の定、Yahoo!ニュースが扱ってくれて、エントリー数が10倍くらいになりました。

その後日本時間の3/31にワイキキビーチでハワイ入社式を本当にやって絵を作って、その映像をすぐ民放各局に送りました。何故かというと4/1は各社「面白入社式」というのがありまして、三菱トンボ鉛筆は鉛筆削り入社式ですとか、鳥羽水族館は水中入社式ですとか。その並びにニュースをねじ込んでいくために、あえて前日にハワイで入社式を行なって映像を送ったということです。この新聞広告を出すところから始まる一連の流れが、クリエイティブPRの特徴となります。

この場合「What to Say」は外食グローバル企業トリドールで、「How to Say」は日経新聞でお堅い媒体映えするようなグラフィックで目立たせて、最後の「ニュース性」は入社式という時事性です。催事物が日本では報道として取り上げられやすいので、4/1入社式報道を狙ったのですが、単なるワングラフィックで終わらせない情報の流れを「What to Say」、「How to Say」、「ニュース性」と作っていくのが企画の制度が高まる方法だと思っています。

そもそもPRとは?

PRは「パブリックリレーションズ」の略で、直訳すると「公的な関係」になります。日本では広報とかコーポレートコミュニケーションという風に略されることが多いんですけど、適切な訳語がないのが現状です。このパブリックリレーションズという概念は、企業というものが存在するときに、どのような人達に情報を発信して良好な情報関係を築くべきかという所からスタートします。

会社というものが存続するのに、顧客に売って売り上げを得る、いわゆるマーケティングはもちろん必要ですが、マーケティングのコミュニケーションだけでは全くやっていけない所があります。例えば仮想通貨取引所とかは金融庁との綿密なやり取りが必要ですし、製造業だと工場が排出する排気ガスを環境省とやり取りする必要があります。政府自治体に限らずNPO法人とやり取りする場合もありますし、競合他社とも情報関係を築かなければいけません。それに従業員ともミッションを共有して、会社のあるべき姿を共有しながら進まないといけない。ただ本質的には、このメディアを介さなくてもPRというものは成り立つので、良好な情報関係を保つためには、基本的には直接会社にとって重要なステークホルダーに連絡を取って、情報関係を改善していくというのもPRの仕事に含まれます。

日本では主にマーケティングのPRが重要視されているので、それ以外の部分を解決できている会社はあまりないのですが、コーポレートコミュニケーションといった時にはこういったことを全部考えながら戦略を考えるようにしています。

PRの手法

PRは、企業と生活者の真ん中にいる新聞記者、雑誌編集者、クリエイティブディレクター、ネット記事編集者、学者、作家、文化人、インフルエンサーにアプローチします。いわゆるメディアに出る人であり、影響力がある人物達にアプローチをして情報を持ち込んでいきます。常日頃からTV番組のプロデューサーやディレクターと接触して、資料や商品を番組に提供しているんですが、その手法は大きく5つくらいあります。

例えば一番一般的なのは、プレスリリースです。2~3枚の紙に商品・サービスの全てがパッとわかるようになっているものですね。ただ実際プレスリリースを書くという事は情報をまとめる意味はありますが、露出させるという点でいうと、あまり意味はないと言ってもいいです。この情報を載せてもらうためには直接メディアに対してリレーションのある人に電話で言うとか、媒体の編集者の切り口に合わせた形でメールで文章を送ったりですとか、もしくはそもそもニュース性が高いものはプレスリリースを書いてはいけないという人もいるぐらいで、基本的にスクープ性があるネタというのは直接記者に電話で言って、記者がその情報を載せたと言ったらようやくプレスリリースを書くくらいの順番というのもやっています。

プレスリリースは新商品の発売、新規事業の開始など、色々なニュースを広く知らせるツールとしては一般的だと思います。さらに足の長い話というかストーリー性が高くて、もうちょっと足の長い雑誌とかに取り上げてもらいたいような情報……例えば資生堂が肌についてのレポート、ソニーが色についてのレポートを出したいみたいなニュースレターと呼ばれる冊子をメディアに開示する事もあります。

これはニュースを出していくだけではなくてその背景となった業界の文化でしたり、その企業の裏側開発プロセスみたいなところも載せていくような情報伝達ツールです。他にもプレスキャラバンという形でこんなデジタル時代においても直接編集部やニュースの編集室を訪問するいうのは日常的に行っていて、リアルな会話が非常にクリエーションズには大事だったりします。

新商品を持ってメディアを回ったりですとか、クラウドサービスとか新しいものが大きかったりすると、やっぱり触れてみないとわからないというのがあるので、デジタルの時代だからこそ対面でやる・直接コンタクトを取るというのが大事な手法でもあります。

本当にニュース性が高かったりするものについては、記者発表会を行なっています。ソフトバンクのペッパー君が出たとか、日産と三菱自動車が合併記者会見やるとか、こういった事はどの記者も取材したいものなので、そういったニュース性が高い場合に記者会見をやります。クライアントさんがよく言うのは、記者発表会やりたいと手法から言われたりしますけど、そこはニュース性を判断してニュース性が高いものはこういった事をやる、低いものはプレスキャラバンとかニュースリリースを書くみたいな、実際のそのニュースの引きの強さによって手法を変えていくことが多いです。こういった記者発表会以外にも、今では芸能人を呼んでメディアを呼び寄せるPRイベントみたいなものもあります。

こういった事に加えて、今ではインスタグラマーとかを用いたインフルエンサーPRというのも非常に多いと思います。僕もカルティエさんとかを担当している時とかはインフルエンサーに向けたイベント、インスタグラマー専用のスタジオみたいな所を作ったりしていたので、こういったインフルエンサーPRも非常に活発です。1人のインフルエンサーが数万・数十万単位のフォロワーを持っているという事は雑誌1つ分、Webニュース1つ分位に匹敵する効果を持っているので、無視できない存在になっています。


【「ニュース性」を構成する10要素】

※この中の2つから3つのニュース性が満たされた時、Yahooニュースのトップに上がったり、スマートニュースのトップに載ったりという事が起こる。

 

Profile
◆神谷準一(株式会社神谷製作所 代表取締役)
1978年東京都本郷生まれ。東京大学農学部卒。2004年博報堂入社、PR戦略局に配属。2009年より博報堂ケトル。2016年9月、神谷製作所設立。博報堂ケトルでは、PR出身者ならではの広報スキルと広告・デジタルをミックスしたキャンペーンディレクションを行う。2005年ソニーエリクソン社の音楽ケータイによる「Deftech同時多発LIVE」でFuture marketling Award受賞・カンヌ広告祭ファイナリスト、2009年「私がクマにキレた理由」で交通広告グランプリ、2010年「MOTTAINAI傘」でADFESTブロンズ・経済産業大臣賞を受賞。2017年ADFESTゴールドなど国内外の受賞多数

CATEGORY:イベントレポート

DATE:2018-08-08

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